ギリシャの選挙後も予断を許さないヨーロッパ経済。ギリシャの財政危機が発端になり、イタリア・スペインと飛び火しています。緊縮策のつづくイタリアでは、市民の生活に大きく影響があり深刻さを増しているようです。莫大な財政赤字を抱えた日本は、ヨーロッパの次に標的になるという指摘もあります。どこかが経済破綻に陥れば、世界経済にも大きく影響することは、リーマンショックで体験しています。そのような背景から、現在日本の多くの製造業は、生き残りをかけて日本国内だけでなく世界へと市場拡大を目指そうとしているのではないでしょうか。今の現状を元にデザインという観点から私的な意見を少し述べてみたいと思います。

経済産業省がオープンにしている「中小企業支援調査」において、日本のデザインの現状と今後の政策への示唆をしているレポートがあります。それによると、日本のクリエイティブ産業は、1999年から2004年にかけて減少傾向にあり、輸出よりも輸入が上回っているそうです。さらに、日本のデザインは、アジア圏において評価は高いものの、欧米諸国からの評価はそれほど高くないというのが現状のようです。

海外のデザイン施策、とりわけイギリスにおいては、人材育成、企業へのデザイン活用のアドバイスなどのコラボレーション、国内市場の啓蒙等が充実しており、それらの施策により、1997年対2006年ではクリエイティブ産業の粗付加価値額は6,300億円から1兆1,460億円と1.8倍に増えています。輸出額に関しては、2000年対2006年では、1.7倍に増えています。初等・中等教育においてデザインの義務教育化は、今後のイギリスにおいて非常に強力な資源となりうると想像し、日本とは全く正反対のように映ります。

日本の製造業は、精密さや、正確さ、丁寧さ、手先の器用さなどを得意とするミクロ製品を得意としてきました。高品質を目指し、経済成長も著しく経済大国になりました。ですが、今やそれは過去のものとなり、GDPでは、中国に追い越されてしまいました。品質の次にデザインに力を入れようとしてきたようですが、データで見るかぎり、クリエイティブ産業の拡大よりもクリエイティブ産業の輸入のほうが上回るというのが現状のようです。

デザイン性の向上は一朝一夕にはできません。手っ取り早く「第一線で活躍している著名なデザイナーに頼めばいいのではないか」という意見もあると思いますが、日本に世界的なレベルで活躍できるデザイナーの数は少なく、仮に一流のデザイナーに依頼することが可能だとしても、クライアントサイドのデザインを見る力やデザイナーを選別する目も問われることになり、成熟するまでにはやはり時間を要するのではないかと思われます。

では、このような現状をどうやって打破していけばよいのでしょうか。

これは、私が思うにインターナショナルなレベルまでブラッシュアップする以外にないのではないかと思います。クライアントサイドもデザイナーサイドもです。その点、隣国の韓国は、1993年から取り組み始めたデザイン振興政策を推し進め国際競争力の向上を実現しています。

海外、特にヨーロッパには世界各国から関係者が集まる国際デザインフェアが多く、情報の交換をしあうという場がすでにあります。日本のデザインフェアとは比べ物にならないほど規模も質も違います。多くの方がその点に気付き今行動をしていけば、未来は変わっていくのではないかと思います。

異文化が交わるところにはさらに新しい文化が生まれるのは歴史を見てもわかることです。交通やネットワークのインフラが整ったこの現代において、それらを有効活用し、今後に備えることはデザインの国際競争力を考える上で必要不可欠ではないでしょうか。